AI開発用PCのCPU選び — RyzenとCore Ultra、メモリ上限・PCIeレーン・NPUを公式仕様で並べる

ローカルAIの主役はGPUで、CPUは「道の本数」と「あふれた分の置き場」を決める部品だ。Ryzen 7 9700X/9800X3D・8700GとCore Ultra 7 265K/9 285Kの公式仕様から、メモリ上限・PCIeレーン・NPUの位置づけを整理した。

中央の現場監督の詰所から、大きな重機へ太い道、資材置き場へ中くらいの道が伸び、脇の小さな詰所には道がつながっていない現場のアイソメ図
AI生成のイメージ画像です

AI開発用PCのCPUは「速さ」より、GPUとSSDにつながる道の本数と、メモリの上限で選ぶ。NPUは今のところ判断材料に入れなくていい。

BTOのカスタマイズ画面を開くと、GPUの次に迷うのがCPUだ。RyzenかCore Ultraか、7か9か。値段の差もそれなりにある。

ただ、ローカルLLMや画像生成で計算の大半を受け持つのはGPUだ。CPUに求める仕事は少し違う。

俺はここに挙げるCPUをどれも持っていない。この記事はAMD・Intel・Microsoft・Ollamaの公式ページに書かれた公称値と説明だけで組む。

比べる5つのCPUと公式仕様(公称値)

BTOのAI向け構成でよく選択肢に並ぶ帯から、AMDを3つ、Intelを2つ取った。数字は各社の製品仕様ページの記載どおりだ。

Ryzen 7 9700X Ryzen 7 9800X3D Ryzen 7 8700G Core Ultra 7 265K Core Ultra 9 285K
コア / スレッド 8 / 16 8 / 16 8 / 16 20(P8+E12) / 20 24(P8+E16) / 24
電力の公称値 Default TDP 65W Default TDP 120W Default TDP 65W ベース125W / 最大ターボ250W ベース125W / 最大ターボ250W
メモリ DDR5・2チャネル DDR5・2チャネル DDR5・2チャネル DDR5・2チャネル DDR5・2チャネル
最大メモリ容量 256GB 256GB 256GB 256GB 256GB
メモリ速度の公称値 2枚でDDR5-5600 2枚でDDR5-5600 2枚でDDR5-5200 最大DDR5-6400 最大DDR5-6400
PCIe 5.0 5.0 4.0 5.0と4.0 5.0と4.0
CPUのPCIeレーン 28本(使えるのは24本) 28本(使えるのは24本) 20本(使えるのは16本) 最大24本 最大24本
NPU 記載なし 記載なし あり(最大16TOPS) Intel AI Boost 13TOPS Intel AI Boost 13TOPS
発売 2024年8月8日 2024年11月7日 2024年Q1 2024年Q4 2024年Q4

出典: AMD・Intelの各製品仕様ページ(2026-10-15閲覧、URLは記事末)。

電力の行は、AMDとIntelで定義が違う指標だ。AMDはDefault TDP、Intelはベース電力と最大ターボ電力を載せている。横に並べて大小を比べる数字ではないので、ここでは「各社がこう書いている」までにとどめる。

並べてみると、目立つ差は意外と少ない。メモリは5つとも2チャネル・最大256GB。PCIeレーンも8700G以外は24本で揃っている。差が出るのは、NPUの有無と、8700GだけがPCIe 4.0で道が細いことだ。

CPUが決めるのは「道の本数」と「あふれた分の置き場」

現場でいえば、GPUは重機、CPUは現場監督だ。監督が自分で掘るわけではない。重機と資材置き場に、どれだけの道を引けるかを決めるのが監督の仕事になる。

CPU(現場監督)PCIe 最大24レーンメモリ 2チャネルNPU 13TOPS / なしx16GPU(VRAM)モデルの本体はまずここに載せるx4 + x4NVMe SSD ×2モデルファイルの置き場2chメモリ 最大256GBVRAMからあふれた分を受けるollama ps → 48%/52% CPU/GPUあふれCopilot+ PCの要件 40TOPS超デスクトップのNPUは届かないCPUの役目は計算の主役ではなく「道の本数」と「あふれた分の置き場の広さ」を決めること
Core Ultra 7 265Kの公称値で描いた。PCIeは最大24レーン(構成例 1x16+2x4)、メモリは2チャネル・最大256GB、NPUは13TOPS。Ryzen 7 9700X/9800X3Dも使えるレーン24本・2チャネル・最大256GBで、仕様ページにNPUの記載はない。アンバーの線がローカルAIで効く道、点線が効かない道。

Intelの仕様ページは、PCIeの構成例として「1x16+2x4」を挙げている。GPUに16レーン、NVMe SSDに4レーンずつ2本、という配り方だ。合計がちょうど24本になる。

AMDのRyzen 9000シリーズも、CPUから使えるレーンは24本。これとは別に、マザーボードのチップセット側から使えるPCIe 4.0のレーン数が、9700Xの仕様ページに載っている。X870Eで8本、X870で4本、B650で8本(いずれも公称値)。SSDを3本以上積むなら、この「チップセット側の道」も見ておきたい。

8700Gは事情が違う。CPUのPCIeはPCIe 4.0で、使えるレーンは16本だ。GPU向けの道もSSD向けの道も、この16本の中でやりくりすることになる。グラフィックス内蔵(Radeon 780M)とNPUを載せた代わりに、外へ出る道が細いCPUだと読める。

SSDの規格とモデル置き場の話はNVMe SSDの増設記事にまとめた。

VRAMからあふれたら、CPUとメモリの出番になる

もうひとつのCPUの仕事が、VRAMに入りきらなかったモデルの受け皿だ。

Ollamaの公式FAQは、ollama ps のPROCESSOR欄の読み方を説明している。100% GPU はGPUに全部載った状態、100% CPU はシステムメモリに全部載った状態。48%/52% CPU/GPU のような表示は、GPUとシステムメモリの両方に分かれて載った状態だ。

つまりモデルがVRAMより大きいと、残りはメインメモリに置かれる。そのぶんの計算はCPU側が受け持つことになる。こうなったときに速度がどう変わるかは、VRAMからあふれたときのOllamaの記事で扱っている。

ここで効くのが、さっきの表の「最大256GB」と「2チャネル」だ。5つのCPUはどれも、受け皿の上限は同じ256GBになる。違いが出るとすれば、マザーボードのスロット数と、何枚差すかのほうだ。

ひとつ注意がある。AMDの仕様ページでは、Ryzen 7 9700X/9800X3Dのメモリ速度は2枚差しでDDR5-5600、4枚差しだとDDR5-3600と書かれている。8700Gも4枚ならDDR5-3600だ。容量を取りに行くと速度の公称値が下がる。この段取りはDDR5メモリの増設記事に書いた。

NPUは「付いていれば得」くらいの位置づけ

カタログでいちばん新しく見える言葉がNPUだ。AIの専用回路と聞くと、AI開発用PCなら必須に思える。

ところがMicrosoftの開発者向けガイドを読むと、Copilot+ PCは40TOPSを超える性能のNPUを積んだWindows 11 PCと定義されている。新しいWindowsのAI機能の多くは、40TOPS以上で動くNPUを必要とする、とも書かれている。

デスクトップの公称値はCore Ultra 200SのNPUが13TOPS、Ryzen 7 8700Gが最大16TOPS。どちらもこの線には届かない。Ryzen 7 9700Xと9800X3Dの仕様ページには、NPU(AI Engine)の項目自体がない。

さらに、同じガイドはNPUを「専用にプログラムされたソフトウェアがあって初めて使える」ハードウェア資源だと説明している。ローカルLLMの話に戻ると、Ollamaのモデル配置の説明に出てくるのはGPUとCPU(システムメモリ)の2つだけだ。

だから今のデスクトップでは、NPUの有無でCPUを選び分ける理由は薄い。KY活動でいえば「NPU付きだから将来も安心」という思い込みが、潰しておきたい危険の1つだ。

用途別に、CPUで見るべき点

ここまでを、カスタマイズ画面で迷ったときの判断に落とす。線は公称値から俺が引いたもので、性能の実測ではない。

やりたいこと CPUで見る点 この5つで言えること
ローカルLLM・画像生成をGPUで回す 使えるレーン数とPCIeの世代 8700G以外は24本・PCIe 5.0。8700Gは16本・PCIe 4.0
SSDを2本以上積んでモデルを置く CPU側のレーンと、チップセット側の本数 8700G以外はCPU側24本。チップセット側はマザーボード次第
VRAMより大きいモデルも動かしたい 最大メモリと、何枚差しで速度がいくつか 5つとも最大256GB。4枚差しは速度の公称値が下がる
Copilot+ PCのAI機能を使いたい NPUが40TOPSを超えるか 5つとも届かない(最大でも16TOPS)

迷ったら、CPUの差額はGPUのVRAMかメモリ容量に回すほうが「できること」が増えやすい。VRAMの容量帯ごとの考え方は用途別のBTO構成で整理した。

結論

AI開発用PCのCPUは、上位を選んでも載るモデルは増えない。見るべきは、GPUとSSDに道を引けるレーン数と、あふれた分を受けるメモリの上限と速度だ。今回の5つは、8700G以外ならその点でほぼ横並びになる。

今週のセール機は今週のセール機をVRAM基準で仕分けた表で、VRAMとメモリの二本で線を引いた順位は二刀流ランキングで見られる。

最強の1台より、外せない2点を外さない1台。CPUの欄は、GPUとメモリの邪魔をしないかだけ確かめれば足りる。


※本記事はAMD・Intel・Microsoft・Ollamaの公式情報(公称値)に基づく解説です。実際の性能はマザーボード・メモリ構成・ソフトウェアの設定によって変わります。購入前に各ショップの構成表と各社の最新仕様を確認してください。

出典