GPU比較

ゲーミングノート(RTX 50 Laptop)でAI開発 — 同じ名前のGPUでもVRAM・電力・メモリ増設がデスクトップと違う

RTX 50シリーズのLaptop GPUとデスクトップ版をNVIDIA公式の公称値で比較。5070 Tiは16GBが12GBに、5070は12GBが8GBになる。電力の幅とメモリ増設の可否もメーカー公式仕様で確かめ、AI開発でノートを選ぶときの見方を整理。

同じ形の重機が、広い資材置き場の現場と、狭い置き場を積んだトラックの荷台に分かれて並ぶ比較イメージ
AI生成のイメージ画像です

ゲーミングノートでAI開発をするなら、GPUの名前ではなく「VRAMの容量」と「メモリを後から足せるか」の2点で選ぶ。

RTX 5070のノートと書いてあっても、中身はデスクトップのRTX 5070とは別の部品だ。NVIDIAの公式仕様表でも、デスクトップ版と「Laptop GPU」は別の列に分かれている。

ゲームなら「少し遅い同じGPU」で済む話かもしれない。だがAI用途では、VRAMが1段小さいだけで載るモデルが変わる。

俺はRTX 50のノートを持っていないので、この記事はNVIDIA公式の仕様表と、ノートメーカーの公式仕様ページだけで組む。

同じ「RTX 5070」でも、VRAMの器が違う

まずはVRAMだ。NVIDIA公式の仕様表から、デスクトップ版とLaptop GPUを並べる。

VRAM(資材置き場)電力(公称値)qwen3:14b 9.3GBgpt-oss:20b 14GBRTX 5090デスクトップ 32GBLaptop 24GBVRAM −8GB575W95-150WRTX 5080デスクトップ 16GBLaptop 16GB360W80-150WRTX 5070 Tiデスクトップ 16GBLaptop 12GBVRAM −4GB300W60-115WRTX 5070デスクトップ 12GBLaptop 8GBVRAM −4GB250W50-100W名前が同じでも、器(VRAM)と電力の枠は別物。ノートはVRAM表記まで見る
上の帯がデスクトップ版、下の枠がLaptop GPUのVRAM(横の長さが容量)。点線はOllamaライブラリの表示サイズで、帯が点線を越えていればそのモデルのファイルが収まる。右は電力で、デスクトップはカード全体の電力、ノートは公式のGPUサブシステム電力の幅(メーカーの設計で決まる)。数値はNVIDIA公式の公称値。
GPU デスクトップ版 VRAM Laptop GPU VRAM デスクトップ版 帯域幅 Laptop GPU 帯域幅
RTX 5090 32GB GDDR7 24GB GDDR7 1,792GB/s 896GB/s
RTX 5080 16GB GDDR7 16GB GDDR7 960GB/s 896GB/s
RTX 5070 Ti 16GB GDDR7 12GB GDDR7 896GB/s 672GB/s
RTX 5070 12GB GDDR7 8GB GDDR7 672GB/s 384GB/s
RTX 5060 8GB GDDR7 8GB GDDR7 448GB/s 384GB/s

出典: NVIDIA公式 GeForce RTX 50 シリーズ ノートPCの仕様表、GeForce グラフィックスカード比較(いずれも公称値、2026-10-17閲覧)。

VRAMが同じなのは5080と5060だけだ。5090は8GB、5070 Tiと5070は4GBずつ、ノート側が小さい。

CUDAコア数も違う。公称値で、デスクトップのRTX 5070 Tiは8,960、RTX 5070 Ti Laptop GPUは5,888だ。名前の数字が同じでも、重機の台数からして別の現場だと思ったほうがいい。

4GBの差で、載るモデルが入れ替わる

AIのモデルは、VRAMに丸ごと載るかどうかで扱いが変わる。Ollamaの公式ライブラリに表示されているファイルサイズ(公称値)を、ノート側の枠に当ててみる。

モデル(Ollamaライブラリ) 表示サイズ 8GB(5070 Laptop等) 12GB(5070 Ti Laptop) 16GB(5080 Laptop) 24GB(5090 Laptop)
qwen3:8b 5.2GB 収まる 収まる 収まる 収まる
qwen3:14b 9.3GB 収まらない 収まる 収まる 収まる
gpt-oss:20b 14GB 収まらない 収まらない 収まる 収まる
gemma3:27b 17GB 収まらない 収まらない 収まらない 収まる
qwen3:32b 20GB 収まらない 収まらない 収まらない 収まる

出典: Ollamaライブラリ qwen3・gpt-oss・gemma3の表示(2026-10-17閲覧)。

デスクトップのRTX 5070 Ti(16GB)ならgpt-oss:20bのファイルが収まるが、RTX 5070 Ti Laptop GPU(12GB)では収まらない。同じ名前で、載るモデルが1段入れ替わる。

しかもこの表はファイルサイズだけの比較だ。NVIDIAの技術ブログは、会話の履歴を保持するKVキャッシュのメモリ量が系列長に比例して増えると説明している(出典: NVIDIA Technical Blog)。枠ぎりぎりのモデルは、実際には収まらない側に倒れうる。

VRAMの段ごとに何が載るかは、ローカルLLM向けPCスペックの早見表にもまとめてある。

電力の「幅」は、ノートのメーカーが決める

デスクトップ版はカード1枚の電力が1つの値で載っている。公称値で、RTX 5090が575W、5080が360W、5070 Tiが300W、5070が250W、5060が145Wだ。

一方、Laptop GPUの仕様表にあるのは「GPUサブシステム電力」という幅だ。RTX 5090 Laptop GPUが95〜150W、5080が80〜150W、5070 Tiが60〜115W、5070が50〜100W、5060が45〜100W(公称値)。

ブーストクロックも「1500 - 2287 MHz」(5080 Laptop GPU)のように幅で書かれている。どこに落ち着くかは、載せるノートの設計次第ということだ。

実際に、同じASUSの2025年モデルでも差がある。公式仕様ページによると、ROG Strix SCAR 18(2025)のRTX 5080 Laptop GPUは「175W(150W+25W Dynamic Boost)」、ROG Zephyrus G16(2025)のRTX 5080 Laptop GPUは「120W(100W+20W Dynamic Boost)」と記載されている(出典: ROG Strix SCAR 18 (2025) 仕様・ROG Zephyrus G16 (2025) 仕様)。

同じRTX 5080 Laptop GPUで、電力の枠に55Wの差がある。この差で速さがどれだけ変わるかは公式に示されていないので、ここでは書かない。言えるのは、ノートの比較は「GPU名」だけでは相見積もりにならない、ということだ。

帯域も細くなる。載ったあとの速さに効く

表の右2列は帯域幅だ。RTX 5070はデスクトップの672GB/sに対してLaptop GPUが384GB/s、RTX 5090は1,792GB/sに対して896GB/s(公称値)。

NVIDIAの技術ブログは、LLMの文章生成(decode)の段階はメモリからGPUへデータを運ぶ速さで決まる、メモリ律速の処理だと説明している(出典: NVIDIA Technical Blog)。

この説明に当てはめると、同じモデルがVRAMに収まっていても、帯域が細いノート側は文章生成で不利になる、というのが公称値から引ける線だ。何割遅くなるかはモデルと設定で変わるので、数字は出さない。

搬入口(VRAM)が狭いうえに、搬出口(帯域)まで細い。ノートのGPUは、同じ名前の重機を小さな現場に合わせて組み直したものだと考えるとわかりやすい。

メモリを後から足せないノートがある

VRAMからあふれたモデルは、メインメモリで受けることになる。Ollamaの公式FAQには、ollama ps の PROCESSOR 欄で、モデルがGPUに全部載ったか(100% GPU)、GPUとメインメモリに分かれたか(例: 48%/52% CPU/GPU)を確かめられると書かれている(出典: Ollama FAQ)。

あふれたときの受け皿になるのがメインメモリだ。ここでノートとデスクトップの差がもう1つ出る。

ASUS公式の仕様ページで、2つのモデルの記載を並べるとこうなる。

ROG Zephyrus G16 (2025) ROG Strix SCAR 18 (2025)
メモリ 32GB LPDDR5X オンボード DDR5-5600 SO-DIMM
最大容量 32GB 64GB
スロット 増設不可(No expansion possible) DDR5 SO-DIMMスロット×2
VRAM(RTX 5080 Laptop GPU) 16GB GDDR7 16GB GDDR7

出典: ASUS公式 ROG Zephyrus G16 (2025) 仕様・ROG Strix SCAR 18 (2025) 仕様(2026-10-17閲覧)。

オンボードのメモリは、買ったときの容量がそのまま最大になる。スロット式でも、最大容量はメーカーの記載が上限だ。

デスクトップなら、マザーボードのスロット数と対応容量の範囲でメモリを足せる。この選び方はメモリ増設の記事に書いた。ノートを選ぶなら、購入画面の「最大容量」と「オンボード/スロット」の欄を先に見るのが段取り八分だ。

あふれたときに何が起きるかは、手元の8GB機の記録をOllamaのモデルが VRAMからあふれる記事にまとめてある。

ノートかデスクトップか(判定表)

確かめる点 ゲーミングノート デスクトップ(BTO)
VRAM 同じ名前でも小さいことがある(5070 Ti: 12GB、5070: 8GB) 名前どおりの容量(5070 Ti: 16GB、5070: 12GB)
GPUの電力 幅で決まる(例: 5080 Laptopは80〜150W)。機種ごとに確認 カード1枚の値(例: 5080は360W)
メモリ増設 オンボードは増設不可。スロット式も上限あり スロット数と対応容量の範囲で足せる
持ち運び できる できない

判定は公称値とメーカーの記載から俺が引いた線で、実測ではない。

持ち運びが要らないなら、同じ予算でVRAMが1段大きいデスクトップを見る価値がある。持ち運ぶならノートを選び、VRAMの容量とメモリの最大容量を、型番より先に指差し確認する。

GPU同士の比較はRTX 5060 Ti 16GBとRTX 5070 12GBの記事も参考になる。

結論

RTX 50のノートでAI開発をするなら、「名前」ではなく「VRAMの容量」と「メモリを後から足せるか」で選ぶ。特に5070 Tiと5070は、デスクトップ版よりVRAMが4GB小さい。

デスクトップのセール機をVRAM別に見たいなら、今週のセール機をVRAM基準で仕分けた表がある。VRAMとメモリの両方で線を引いた二刀流ランキングもある。

最強の1台より、外せない2点を外さない1台。ノートの2点は、VRAMの表記とメモリの最大容量だ。


※本記事はNVIDIA公式サイトとノートPCメーカー公式サイトの公称スペックに基づく解説です。筆者による実測は含みません。仕様は記載時点のもので、同じ製品名でも構成や地域で異なることがあります。

出典